
「そろそろ自社で研修を内製化したいけれど、準備が大変そう……」
「現場の社員に講師を頼むのも気が引けるし、結局外注したほうが楽なのかな?」
優秀な人材の確保・育成が課題で、社員教育の重要性が高まる今、研修の内製化を検討しながらもすべて自社で作ろうとすると、教材作成に追われて本来の業務が回らなくなるのでは?と一歩踏み出せずにいる……そんなお悩みをお持ちではないでしょうか?
内製化には、外部委託の費用削減やノウハウ蓄積といった大きなメリットがあります。一方で、すべてを自社でこなそうとすると、膨大な工数や講師のスキル不足といった課題にぶつかってしまうのも事実です。
本記事では、研修内製化のメリット・デメリットを整理し、失敗しないためのポイントや、リソース不足を解消するためのコツを詳しく解説していきます。
研修を自社で企画・運用する体制を整えることで、単なる経費削減以上の大きな価値を組織にもたらすことが期待できます。ここでは、多くの企業が内製化に踏み切る主な5つの理由を深掘りします。

外部の研修会社に依頼する場合、講師への謝礼や参加人数に応じた受講料など、実施のたびに目に見える費用が発生します。 内製化が進めば、これらの外部委託費用を直接的に抑えることが可能です。特に、新入社員研修や階層別研修など、毎年決まった時期に大人数で実施するプログラムであれば、回数を重ねるほど受講者1人あたりの教育単価を下げることができます。限られた予算を、より優先度の高い別の施策へ活用できるようになるのも大きなメリットです。
外部の研修は汎用的なパッケージ内容が多く、自社の現場の実態と微妙に噛み合わないことがあります。 内製研修であれば、自社の経営理念や、現場で実際に起きている成功・失敗事例を教材に反映できます。自社の「共通言語」を使って解説することで、受講者が「明日からの業務にどう活かすか」を具体的にイメージしやすくなり、学習の即効性が高まります。
研修を内製化することは、社内の一部でしか活用できていない貴重なノウハウなどを、企業の「知的資産」として有効活用することに繋がります。 特定のベテラン社員や一部の部署でしか知らなかったコツを教材として形に残すことで、担当者が変わっても質の高い教育を継続できる体制が整います。外部委託の場合、契約終了後はコンテンツや運営ノウハウが社内に残らないことが多いですが、内製化すればこれらが企業の「知的資産」として長期的に活用できるようになります。教材だけでなく、効果的な教え方や運営のコツそのものが社内に蓄積されることは、組織にとって長期的な財産となります。
市場環境の変化や、自社の事業フェーズ、受講者のレベルに合わせて、研修内容をスピーディーにアップデートできる柔軟性があります。外部委託の場合、内容の変更に別途費用がかかったり、修正までに数週間の調整が必要だったりすることがありますが、内製化であれば「前回のアンケート結果を受けて、このワークの難易度を少し上げよう」「最新の業界ニュースを事例に加えよう」といった微調整も即座に行えます。常に「今、現場が必要としている最新の情報」を提供し続けることができます。
講師を任される社員にとっても、大きな成長の機会になります。 自分の実務知識を体系的に整理し、他者に分かりやすく伝える経験は、自身の理解をさらに深めることにつながります。プレゼンテーション能力やファシリテーションスキルが磨かれるだけでなく、教える側としての自覚が芽生えることで、次世代リーダーとしての資質を高める副次的な効果も期待できます。
メリットが大きい一方で、いざ進めようとすると直面する「現実的なハードル」も存在します。これらを事前に把握しておくことが、失敗を防ぐポイントになります。
内製化を進めるにあたって、まず直面するのが「リソースの確保」という大きな壁です。これは単に作業時間が足りないという話だけではなく、「誰が、どうやって作るのか」という人員やスキルの不足も含めた、切実な問題です。
1つの研修を完成させるためには、カリキュラムの構成からスライド資料の作成、当日の運営まで、想像以上に多くの「人の手」と「専門知識」を必要とします。こうした膨大な工程を、限られたメンバーだけで、通常業務と並行しながら完遂させるのは決して容易ではありません。結果として、準備そのものが重いプレッシャーとなり、通常業務を圧迫してしまう事態は、現場の担当者が最も陥りやすいリスクといえます。
実務において優秀な成績を収めている社員が、必ずしも「教えること」のプロであるとは限りません。教えるスキル不足の側面や進行の不備など、どうしても講師個人のスキルに頼る部分が大きくなってしまうからです。組織として一定の教育レベルを保ちたくても、属人化してしまいコントロールが効かなくなることがあり、受講者の満足度や学習効果にムラが生じやすく、組織全体でのスキル底上げが計画通りに進まないリスクが考えられます。これは内製化を進めるうえで避けては通れない課題です。
社内のメンバーだけで研修を作り上げようとすると、どうしても視点が「内向き」になりがちな点も注意が必要です。 自社独自のルールには詳しくなれる一方で、業界全体の最新トレンドや、「世の中で成果が出ている効果的な手法」が反映されにくい情報の偏りが起きる懸念があるからです。
特にDX(デジタルトランスフォーメーション)や生成AIの活用といった、変化の激しい分野については、意識的に外部の情報を取り入れなければ、研修内容がすぐに陳腐化してしまいます。外部の専門的な視点をどう取り入れるかが問われます。
これまでに見てきたように、内製化には「自社独自のノウハウを蓄積できる」という大きなメリットがある一方で、「担当者のリソース不足」や「質のバラツキ」といった避けられないデメリットも存在します。
これらを踏まえた上で、内製化を「理想論」で終わらせず、持続可能な仕組みにするための3つのポイントをご紹介します。
デメリットでも触れた通り、最初から全社の教育体系を一気に作り変えようとすると、担当者のリソースはすぐに底を突いてしまいます。その結果、多くの時間とコストを投じたにも関わらず、中途半端な状態で終わってしまう…という残念な結果になりかねません。 そうした失敗を避けるためにも、まずは小さく始めることをおすすめします。まずは、毎月発生する定型的なレクチャーや、現場から要望の強いマニュアル作成など、範囲を絞って着手してみてください。作成する教材の数や、調整が必要な関係者を最小限に抑えることで、日常業務を止めることなく着実にプロジェクトを進められます。
また、小さな成功体験を積み重ねることで、社内の理解や協力を得やすくなるというメリットもあります。「このやり方なら無理なく続けられそうだ」という手応えを関係者と共有しながら、徐々に対象範囲を広げていくことで、無理のないペースで実績を作っていくことは、担当者の負担を抑えながら内製化を軌道に乗せるための、現実的なアプローチとなります。
内製化の課題である「講師による質のバラツキ」を解消するには、講師個人のスキルに頼りすぎない工夫が欠かせません。 そのための有効な方法が、受講者が共通で視聴できる、質の高い動画コンテンツを事前に用意することです。重要な解説パートや、毎回同じ内容を説明する必要がある基礎部分などを、あらかじめプロの手を借りて分かりやすい動画教材として制作しておきます。これにより、講師が毎回ゼロから説明する必要がなくなり、「教え方の質」を一定の水準に保つことができます。
講師の役割を「すべてを教える人」から「受講者の疑問に答え、理解を深める伴走する人」へシフトさせることで、教え方の質を安定させつつ、登壇を依頼される社員の心理的な負担も軽減されます。
内製化のメリットである「ノウハウの資産化」を確実なものにするために、教材の作り方や運営の流れをあらかじめ「型」として共通化しておきましょう。 資料のテンプレートやアンケート項目、受講案内の文面など、「この手順に沿えば、誰が担当になっても同じ質で運用できる」という状態を整えます。
仕組みとして「型」を作っておくことは、属人化を防ぎ、社員の負担を軽くするだけでなく、社内の貴重なノウハウを、誰でも活用できる再現性の高い「組織の資産」として活用させることができます。
ここまで「運用上の工夫」を見てきましたが、それでも現場のリソースには限界があります。メリットを最大限に享受しながら、実務負担を減らすための具体的な解決策を深掘りしていきましょう。

内製化の本質は、あくまで「自社に最適化されたコンテンツを保有し、自社の判断で運用すること」にあります。
教材の構成案からスライドデザイン、マニュアル作成に至る「制作の実務プロセス」まで、すべてを人事担当者が抱え込む必要はありません。
重要なのは、自社の貴重なノウハウをいかに効率よく運用していくかという視点です。
実務作業をプロの手を借りて進めたとしても、その中身が自社のノウハウであれば、それは立派な内製化といえます。
この考え方に基づいて注目されているのが、ハイブリッド型内製化という手法です。
自社が持つ現場のノウハウを生かしながらも、最も工数がかかる「教材制作」や「カリキュラム設計」の部分だけを、外部の専門家に委託するアプローチです。
これにより、人事担当者は教材作成の実務作業から解放され、「どんな人材を育てたいか」「どんな研修が必要か」といった教育戦略の策定に集中できるようになります。
また、現場で活躍する社員も、本業を圧迫されることなく、自分たちの知見を高品質な学習コンテンツとして残すことが可能になります。
さらに、教育設計のプロの視点が入ることで、「伝えたいこと」が「伝わる形」に整理され、教材のクオリティが向上する点も大きなメリットです。
こうしたハイブリッド型の内製化を実現できるサービスとして、株式会社TRUNKが運営するWorkschoolがあります。
Workschoolでは、会社の中に眠っている現場のノウハウを、専門のチームが丁寧にヒアリングし、
受講者が理解しやすいデジタルコンテンツへと昇華させる「動画制作・教材化」の支援を提供しています。自社のノウハウをしっかり活かしながら、教材の質を担保できる点が特徴です。
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教材を作った後に待っているのが、受講者管理、進捗確認、テストの採点、アンケート集計といった、地道で煩雑な運用業務です。これらの事務作業に追われてしまい、肝心の「研修の改善」や「次の施策の企画」に時間を割けないという悩みを抱えるケースも多いでしょう。
この課題を解決するのが、LMS(学習管理システム)の活用です。
LMSを導入することで、研修の自動化・運用の効率化を実現できます。
受講履歴の記録、テストの自動採点、アンケートの集計、修了証の発行といった業務をシステムに任せることができます。担当者は、リアルタイムで可視化されたダッシュボードから受講状況を確認するだけで済むため、手作業の事務負担から解放されます。
さらにデータをもとに「どの研修の効果が高いか」「どこを改善すべきか」といった本質的な戦略づくりに集中できる環境が整います。
Workschoolは、こうした運用業務を支援するLMSも提供しています。教材制作から受講管理までを一貫してサポートすることで、無理なく、かつ着実に自社のノウハウが積み上がっていく、持続可能な内製教育の体制を最短距離で築くことが可能です。
内製化のメリットを活かしつつ、リソース不足の罠にはまらないためには、すべての研修を自前でやろうとしない「仕分け」が重要です。自社の強みを出すべきところと、プロに任せて効率化するところを戦略的に使い分けましょう。
自社独自の価値に直結するものは内製に適したテーマです。他社には真似できない自社固有の価値観や、現場で培われた具体的な知見は、内製化して「組織の資産」にすべき領域です。
【具体例】
・ 企業理念やミッションの浸透
・独自の業務ルール
・自社製品・サービスの深い知識
・現場の成功事例
・トラブル対応マニュアル
【判断のポイント】
社外に代わりのノウハウが存在せず、自社の文脈で語らなければ意味がないものです。また、機密性の高い現場のリアルな情報を扱う場合も、自社内で教材化するのが最も適しています。
汎用的、または高い専門性や客観性が求められるものは「外部」のプロに任せるのが効率的です。
【具体例】
・ ロジカルシンキング
・リーダーシップ理論
・法改正対応(コンプライアンス)
・ハラスメント防止
・AIやIT・PCスキル
・語学研修
【判断ポイント】
市場に質の高い教材が溢れているテーマを、ゼロから自社で作るコストは見合いません。また、ハラスメント教育のように「第三者の視点」や「専門家の権威」があることで、受講者がより素直に内容を受け入れられるものも、外部委託が推奨されます。
研修の内製化で一番もったいないのは、コスト削減を優先しすぎて現場が疲弊し、結局誰も得をしないまま形骸化してしまうことです。
自社のノウハウを内製化する際は、まず小さな範囲から試してみることをおすすめいたします。そして、負担の大きい工程はプロの知恵やシステムを賢く頼ることで、「持続できる仕組み」を構築することが内製化を成功させるポイントです。
すべてを自社で完結させようと無理をせず、自社の強みを活かす部分とプロの力を借りる部分を賢く使い分ける、そんな研修のハイブリッド型の内製化を選択肢に加えてみてはいかがでしょうか。