効率的な学習で成果を上げる不動産営業研修の作り方

効率的な学習で成果を上げる不動産営業研修の作り方

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  • 不動産営業職の新入社員が効率的に知識を習得する研修の作り方を知りたい方
  • 不動産営業の成果に課題を抱えており、研修方法を検討されている方
  • 不動産営業の質を高めたい人材育成担当者

不動産営業は、扱う商品が「不動産」という高価で長期にわたる資産であるため、営業職の中でも、難易度が高いとされ、高度な営業スキルが求められます。また、成約には顧客に対する説得力や信頼性が非常に重要です。信頼獲得には専門知識の習得が必要不可欠ですが、内容が多岐に渡るため限られた研修だけで習得することは難しく、課題を抱える企業も多いです。研修以外のスキマ時間で効率的に知識を習得しながら、コミュニケーション力などのソフトスキル習得のための時間を確保することが重要なポイントとなります。本記事では、不動産営業に特化した研修の設計方法と効果的なトレーニング手法について解説します。

不動産営業の特徴

不動産営業は、高価な商材であるため、 顧客が購入に至るまでの意思決定プロセスが長期化する傾向にあります。
成果をあげるためには

  1. 専門知識を網羅し、顧客に合わせて情報提供できる
  2. 専門知識を元にケースバイケースで適切な判断ができる
  3. コミュニケーションスキルを駆使して、顧客と関係性を築くことができる

などの力が必要とされ、より高度なスキルが求められます。
そのため、一人前の不動産営業として活躍するまでには多くの時間がかかりますが
研修を効率的に行うことで、これまでより早期に活躍できる人材を増やすことができます。
まずは、不動産営業に必要な基礎スキルを見ていきましょう。

不動産営業に必要な基礎スキル

顧客との信頼関係を築くために非常に重要な基本スキルをみていきましょう。

 不動産知識の習得

不動産営業においては取り扱う不動産に関する知識が非常に重要です。

a. 法律と規制
宅地建物取引業法は不動産業界において基本中の基本となる法律であり、これをしっかり理解することが、顧客に信頼される営業担当者になるための第一歩です。定期的な法改正に対応するため、継続的な学習も求められます。

b.市場動向と資産価値の理解
不動産市場は、景気や自然災害などに大きく影響を受けます。顧客に対して適切なタイミングで購入や売却のアドバイスをするため、市場動向を把握し、資産価値の変動を予測する能力が求められます。

c.不動産の種類の理解
不動産の種類には住宅、商業施設、オフィスビル、賃貸などがあります。物件そのものの特徴や知識を把握することが重要です。顧客が求めるニーズに沿った提案が求められるため、各物件の知識をもって正しく説明できる必要があります。
このような知識を習得するのは座学のみでは難しく、個人での学習も必要となります。そのような場合は、eラーニングを活用することで、移動時間や休憩時間などスキマ時間を活用でき、定着につながります。
宅地建物取引業法など、優先度や難易度が高い知識の習得にはeラーニングがおすすめです。

地域性の把握

次いで、物件が所在する地域の特性を理解することは、顧客に対してより適切な提案ができるようになるため重要です。

a. 地域のインフラと開発計画
地域のインフラ整備状況や開発計画は、不動産の価値に直結します。情報をいち早くキャッチし、顧客独自では知ることが難しい情報を伝えることで、信頼を得ることができます。

b. 地域の生活環境
顧客にとって、物件の所在地がどのような生活環境であるかは契約決定前に知り得ておきたい情報です。それぞれの地域には、独自の文化や習慣、住民層があります。例えば、環境の把握には、交通量の多さ、時間ごとの環境の変化、近隣の学校や商業施設、医療機関の有無、治安の良し悪しなどがあります。さまざまな要素を総合的に把握し、提案に反映させることが求められます。

C. 地域の競合分析
地域内の競合他社や類似物件の情報を把握することも、重要なポイントとなります。他社が提供しているサービスや価格帯を知ることで、自社の強みを把握し、それを活かした営業戦略を立てることができます。
人事異動で新しく着任した地域については、データの保管方法がバラバラであるなど、属人化していることで情報収集に時間を要するという課題があります。その場合、この属人化した業務を一元管理できるように情報を整理することで情報収集時間を短縮させると良いでしょう。

コミュニケーションスキル

そして、不動産営業では顧客との信頼関係を築くためのコミュニケーションスキルが極めて重要です。

a. ヒアリング力
顧客のニーズを正確に把握するためには、適切なヒアリングが欠かせません。顧客が何を求めているのか、どのような不安を抱えているのかを丁寧に聞き出し、それに基づいた提案を行うことが大切です。また専門的知識がない顧客に対して、事前に理解しておくべき情報の提供は、信頼度もあがり、顧客が心を開いて質問しやすい環境づくりへと促すことができます。

b. 説明力
不動産取引には、専門用語や法律的な側面が多く含まれるため、顧客にわかりやすく説明する能力が求められます。例えば、契約書の内容や住宅ローンの仕組みなど、専門的な情報を噛み砕いて伝えることで、顧客の理解と納得を得ることができます。情報過多で顧客が一度で理解できない場合もあるため、TPOに合わせて説明できると、より顧客に寄り添った対応となります。

c. 交渉力
不動産取引では、価格や契約条件についての交渉が必要になる場面が多々あります。最適な条件を引き出すための交渉力は、成約率を左右する重要なスキルです。交渉次第で契約決裂の可能性があるため、慎重かつ円滑に交渉を進めるスキルが求められます。顧客の利益を最大限に考慮しながらも、売主側の尊重を汲み取り、架け橋となって交渉する必要があります。物件によっては、不動産営業担当者の迅速な対応により交渉がスムーズにいくこともあるため、交渉の場面では対応の早さを意識することが重要です。

d. 柔軟な対応力
顧客が直面する問題や不安を解消するための問題解決への対応力は、信頼関係を築く上で重要です。例えば、ローンの審査が通らなかったり、物件の瑕疵(かし)が発覚したりすることがあります。こうした問題に対して迅速かつ的確な代替案を提示し、顧客にとって最良の解決策を提案できる能力が必要です。
高額な取引である不動産では、顧客の心理を理解し、不安を解消する能力が成約率を大きく左右します。ソフトスキルであるコミュニケーションは実践での研修が重要です。そのため、フィードバック担当の先輩社員も含めて研修時間をしっかり確保する必要があります。

顧客管理システム(CRM)の活用

近年、不動産業界でも顧客管理システム(CRM)の導入が進んでいます。顧客管理システムを活用することで、顧客情報を一元管理し、効率的な営業活動が可能になります。その利便性は認識されていても、最大限利用できているでしょうか。基本操作や活用方法について研修で取り扱うことは利用促進に繋がる重要なポイントです。

顧客管理システムを導入後しっかり活用することは成約件数を増やしたり、業務効率につながるなどメリットが多く、業務底上げとなります。
操作方法や具体的活用手順を研修内容に組み込むことは無駄なリソースの削減となり、引いては不動産営業人材に必要なスキルを高めるために必要な時間を確保することにも紐付きます。基本操作の学習方法としてeラーニングが選択肢の1つとしてあります。

効果的な不動産営業研修の設計

効果的な不動産営業研修を設計するためには、不動産営業の基礎スキルを効率的に定着させることがポイントです。
上記で解説した基本スキル

  1. 専門知識を網羅し、顧客に合わせて情報提供できる
  2. 専門知識を元にケースバイケースで適切な判断ができる
  3. コミュニケーションスキルを駆使して、関係性を築くことができる

の3点を、効率的に習得するための研修を設計していきます。

1. 研修の構成

専門性の高い知識を効率的に定着化させるためには、座学とeラーニングを両軸で活用して学習を進めます。座学だけで完了することは難しいため、継続的に学習可能な環境をeラーニングを活用して用意しましょう。eラーニングで効率的に知識のインプットを進め、ソフトスキルを磨く実践の時間を確保しましょう。今回は5つのステップに分けた構成をご紹介します。

  1. 不動産知識の習得: 不動産に関する基本的な知識を学ぶ(宅地建物取引業法・市場動向・不動産の種類の把握)
  2. 地域特性や顧客ニーズの把握:地域情報収集や顧客ニーズのキャッチ、競合の把握する
  3. コミュニケーション力強化: 様々な場面を想定し、シナリオや対応策を考案し、現場に近い体験でソフトスキルを強化
  4. 業務効率化と戦略:顧客管理システム(CRM)の利用方法を学ぶ
  5. OJT:現場に同行し、営業の経験を積む

2.トレーニング手法

構成を元に、カリキュラムに適した手法で実施することをおすすめします。

  • 座学: 集団で対面式、またはオンラインで講座を行う
  • eラーニング: 移動やアポイントメントまでの空き時間に、オンラインで学習できるコンテンツを提供し、効率的に知識を習得できる環境を整える
  • ロールプレイ: 顧客役と営業役に分かれて、実際の商談をシミュレーションすることで、実践的なスキルを養う
  • OJT): 実際の業務を通じて、先輩社員や上司から直接指導を受けることで、実践力を高める

Workschoolでは、
不動産業界において基本となる宅地建物取引業法を習得することができます。Workschoolの詳しい内容についてはこちら。

3. 実践の評価とフィードバック

顧客対応は、実践で何度も経験することで、磨かれていくため、研修カリキュラムの中でも時間を確保したい部分です。顧客との信頼関係を築くことのできる人材に育成するためには、研修内で先輩の営業担当からのフィードバックや評価を受け、成長し自信を得る必要があります。経験豊富な社員に協力を仰ぎましょう。メンター制度がない場合は、先輩社員との貴重なコミュニケーションの場となり、繋がりも生まれます。

不動産営業研修を成功させるポイント

研修成功のためのポイントをご紹介します。

 隙間時間をうまく活用する

不動産営業は顧客や取引先とのアポイントメントでスケジュールが埋まっていくため、自身のスケジューリングが細かく、多忙な職種であり、研修のために長時間を確保するのが難しいことがあります。そのため、隙間時間をうまく活用できるように、eラーニングや短時間で学べるマイクロラーニングコンテンツを提供することが有効です。 

 ロールプレイを繰り返す

ロールプレイは、不動産営業における実践力を養うための最も効果的な手法の一つです。顧客対応や商談のシナリオを繰り返し練習することで、営業担当者は自信を持って実際の現場に臨むことができます。経験値が浅いことや自信のなさは顧客に伝わってしまうとマイナスポイントとなってしまうため、様々な場面を想定して研修で多くの実践を行いましょう。

現場の成功事例にアクセスできるようにする

成功事例の共有は、営業担当者にとって非常に参考になります。実際の現場で成功した営業手法や対応方法を共有し、全体のスキルアップを図ることが重要です。成功事例を基にしたケーススタディを研修に取り入れることで、自身の引き出しが増え、より具体的な学びが得られます。

 まとめ

不動産営業は専門的な知識とスキルが求められるため、基礎を重点的にかつ効率化を意識した研修プログラムの設計が欠かせません。また顧客との信頼関係が非常に重要なため、ロールプレイや実践カリキュラムにしっかりと時間をかけ、コミュニケーションなどのソフトスキルを向上させることもポイントとなります。これらのポイントをおさえた研修を実施することで、新入社員が成果を上げる人材へと成長するでしょう。