
・社員の育成に悩む現場マネージャーや管理職の方
・現場の育成力強化を課題とする人事担当者
・社員の指導方法に不安を感じている方
社員の育成に関わる役職の方は、丁寧に指導したつもりでも、期待通りに成果が出なかったり、自発的に学ぶ姿勢が見えなかったりという課題があると、「自分の指導方法が悪いのかな?」と不安を感じることもあるのではないでしょうか。本記事では、そのような課題を打破するために、人材育成に根幹となる「大切なこと(マインド)」を整理した上で、必要なスキルと人材育成のポイントを詳しく解説します。
人材育成において大切なこととは、スキルを学ぶ前に指導の土台となるマインドセットを整えることです。 人材育成と聞くと、「OJTのやり方」や「面談の技術」など、具体的な「手法」やスキルに目が行きがちですが、その根底にある組織や指導者が持つべき「考え方」や「視点」が非常に重要です。この土台がしっかりしていることで、スキルが活きて、育成がスムーズに進みやすくなるでしょう。
現代のビジネス環境は変化が激しく、上司や先輩が「すべてを教え込む」育成だけでは、スピードや多様性に対応しづらくなっています。だからこそ育成担当者には、指示待ちではなく自ら判断し行動できる「自律型人材」を育てる視点が求められます。指導者が一方的に答えを渡すのではなく、本人が「どうしたいか」「どうすれば解決できるか」を考え、選び、行動できるように促すことが大切です。こうした関わりは、目の前の業務遂行だけでなく、変化に対応する力や学び続ける姿勢の土台にもなります。また、社員が自分で考えて行動した結果、うまくいかないことがあっても、すぐに責めるのではなく「次に活かすための材料」として捉え直すことが重要です。主体性を尊重する育成は、結果として自ら学び、成長を積み重ねられる人材の育成につながっていくでしょう。
育成は、短期間で結果を出すためだけのものではありません。「3年後、5年後にどんな役割を担ってほしいか」を考えながら、少し長い目で成長を支えることが大切です。目先の目標達成も重要ですが、それと同時に、将来の活躍を支える土台が育っているかにも目を向けたいところです。その土台の一つが、どんな仕事でも活かせるポータブルスキルです。たとえば、相手に伝わるように説明する力、状況を整理して優先順位をつける力、課題を見つけて改善する力などは、業務や役割が変わっても汎用的な価値が残ります。成果がすぐに見えない時期があっても、「いまは伸びるための準備期間」と捉えて関わり続けることが、社員の安心感と信頼を育てていくでしょう。
「なぜこのスキルを学ぶのか」「何のためにこの業務に取り組むのか」という目的が曖昧なままだと、人はモチベーションを保ちにくくなります。育成は本人の成長のためだけでなく、組織が目標を達成するための取り組みでもある、という視点を共有することが大切です。社員が取り組む学習や業務が、会社のビジョンや目標にどうつながっているのかを言語化して伝えることで、「やらされている感」を和らげ、納得感を持って取り組める状態をつくりやすくなります。目的が見えると、行動の質や継続にも影響してくるはずです。さらに、「あなたには将来この分野でリーダーを担ってほしい」といった期待役割を具体的に伝えることも有効です。自分の努力がどこに向かっているのかが明確になることで、成長への意欲を引き出しやすくなるでしょう。
大切なこと=マインドセットを基盤とした上で、具体的な「スキル」を積み上げることで、育成の効果はさらに高まります。
ここでは、育成担当者が持つべき具体的なスキルを7つご紹介します。具体的な行動例と合わせて解説していきます。

適切な指導をするためには、まず相手の「今」を知ることがスタートラインになります。単なる業務の進捗だけでなく、感情や態度を含めた全体を把握するスキルです。具体的な行動として、単に「進捗はどう?」と聞くだけでなく、「この仕事、何か戸惑っている点はない?」と相手の感情を尋ねることが求められます。現状を把握する上で最も重要なポイントは、「客観的な事実」と「指導者側の解釈」を明確に切り分けて捉えることにあります。例えば、部下の様子を「資料作成のスピードは速いが、顧客への説明時に少し自信がなさそうだった」と記録したとします。この場合、「資料作成に要した時間が予定より1時間早かった」という事象は事実ですが、「自信がなさそうだった」というのは、指導者が部下の表情や声のトーンから受け取った解釈に過ぎません。
このように事実と解釈を分けて整理しておくことで、フィードバックの質は向上します。事実を伝える際は「昨日の資料作成は予定より1時間早く完了していたね」と客観的なデータに基づいた称賛ができ、解釈を伝える際は「顧客からの質問の際、3秒ほど沈黙があったけれど、何か回答に迷う部分があったかな?」というように、観察した具体的な行動(事実)を添えて本人の内面(解釈の確認)にアプローチできるようになるでしょう。
目指すべきゴールを定める「目標設定力」のスキルです。曖昧な目標は、部下を迷わせるだけでなく、評価の基準も不安定にしてしまいます。
効果的な目標を設定するには、具体性や測定可能性を重視した「SMARTの法則」などのフレームワークを活用することが推奨されます。例えば「営業力を高める」という抽象的な表現ではなく、「来月末までに、新規顧客への提案を5件実施し、そのうち2件で成約または前向きな検討を得る」といった、誰が見ても達成か否かが判断できる「事実」に基づいた目標を立てることが大切です。
さらに、目標を立てて終わりにするのではなく、それを達成するための具体的な「行動計画(ネクストアクション)」まで一緒に考えることで、コントロール可能な行動にまで落とし込むことができ、本人の迷いを払拭し、日々の業務への集中力を高まります。
育成におけるコミュニケーションの核心は、単なる情報の伝達ではなく、相手との信頼関係を築くことにあります。そのために欠かせないのが「傾聴」と「承認」のスキルです。
指導者はつい「教えること」を優先してしまいがちですが、まずは相手の話を遮らずに最後まで聴き、背景にある考えや感情を理解しようと努める姿勢が、部下が本音を話せる安全な環境を作ります。そして、結果だけでなく「プロセスにおける具体的な行動」を事実として認め、言葉にして伝える「承認」を積み重ねることで、部下の自己効力感は大きく育まれます。「よくやっている」といった主観的な褒め言葉だけでなく、「今週は毎日欠かさず進捗報告をくれたね」といった事実に基づいた承認を行うことで、部下は自分の行動が正しく見守られているという安心感を得ることができます。
ティーチングは、知識やノウハウを正確かつ効率的に伝えるスキルで、特に新入社員や未経験者への指導において重要になります。指導の際は、「PREP法」などを用い、結論から話すことを意識しましょう。専門用語を避け、相手の理解度に合わせた言葉を選ぶ配慮も必要です。指導の直後に「理解度を確認する簡単なテストや質問」を行うことで、定着度を高めることができます。「これはAという手順でやるんだ」と教えるだけでなく、「なぜAという手順でやる必要があるかというと、Bというミスを防ぐためなんだ」と目的を添えて説明すると、知識がより深く根付きやすくなります。
コーチングスキルとは、社員自身に考えさせ、内なる答えを引き出すことで、自律的な成長を促すスキルです。質問をする際は、「なぜできないの?」という詰問調ではなく、「どうすればできるようになると思う?」というポジティブな表現を意識し、未来志向の質問をすることが大切です。「他に選択肢はある?」と問いかけ、多様な視点を持たせたり、「もし私(上司)の立場だったらどうする?」と、視点を変えさせる質問をすることも有効です。社員が考え込んでいる時には、すぐにヒントを与えず、「沈黙」を許容することで、深く思考する機会を与えましょう。「あの件で、今一番の課題は何だと思うか」「その課題を解決するために、最初の一歩として、あなたがコントロールできる範囲で何から始めるのがベストだろうか」のように、具体的な思考を促す質問を投げかけてみましょう。
社員の成長を加速させるには、適切に「行動の結果」と「改善の方向性」を伝えるフィードバックが必要となります。フィードバックは、事実に基づいた客観的な情報から始めましょう。伝達の際は、I(アイ)メッセージを活用し「私はこう感じた」という伝え方で、主観的な批判にならないように配慮します。改善点を伝える時は、「次にどうすればいいか」という具体的な行動をセットで提案すると良いでしょう。また、ポジティブな点から伝え始め、改善点、そして期待で締めくくる「サンドイッチ型」の伝え方を意識すると、受け入れられやすくなります。例えば、「(事実)提案資料に最新データが反映されていなかったので、(Iメッセージ)私は少し不安を感じたよ。(改善行動)次回は、提案前にデータ更新をチェックリストに入れるのはどうだろうか」のように伝えてみると、ネガティブな表現を避けつつ、具体的な行動を促すことができるでしょう。
内発的動機を引き出して長期的な成長を支えるスキルです。社員の「やる気」を引き出し、維持させるスキルは、育成の継続において最も重要かもしれません。内発的な動機(「この仕事が好き」「成長したい」といった本人の心から湧き出る意欲)を見つけ、それを高めるような仕事のアサインや声かけを行うことが有効です。また、学習履歴やスキルマップの可視化を活用し、「成長が目に見える状態」を作ることも大切です。目標を達成した際には、「感謝の言葉」「称賛」「小さなご褒美」など、具体的な報酬でモチベーションを上げることも忘れてはいけません。「この仕事は君の『細部にこだわる強み』が活かせると思うんだ。ぜひ、このプロジェクトでその力を発揮してほしい」のように、本人の強みと仕事を結びつけて期待を伝えることで、より内発的な動機を刺激することができるでしょう。
ここからは、前述した、人材育成に必要なスキルを現場で活かすための具体的な「仕組みづくり」や「指導のコツ」をご紹介します。
どれほど優れたスキルを学んでも、それを「いつ、どのように繰り出すか」という、現場での向き合い方が伴っていなければ、社員の心にはなかなか響きません。せっかく身につけたスキルを単なる「手法」で終わらせず、社員の成長を力強く後押しするためには、スキルを支える「指導の土台」を整えておく必要があります。
育成効果を最大化し、組織全体で継続的に成長を支えるためのポイントを見ていきましょう。
人材育成のあらゆる場面で、指導の効果を最後に決めるのは「この人の言うことなら信じられる」という部下からの信頼です。この土台がないままテクニックだけを振りかざしても、部下にとっては「また何か言われているな」というノイズにしかなりません。
そこで大切になるのが、最近ビジネスの現場でもよく耳にするようになった「心理的安全性」という状態です。心理的安全性とは、部下が「分からないことを素直に聞いたり、失敗を報告したりしても、自分が否定されたりバカにされたりすることはない」と確信できている状態を指します。
もし部下が「怒られるのが怖い」とビクビクしていたら、どんなに丁寧なフィードバックも、彼らにとっては自分を守るための「攻撃」に聞こえてしまうかもしれません。まずは上司の側から自分の失敗談を少し話してみたり、部下の話を遮らずに最後まで聞く姿勢を見せたりすること。そうした「この人には本音で話しても大丈夫だ」と思える空気作りこそが、育成をスムーズに進められるポイントとなるでしょう。
人材育成スキルを効果的に発揮するためには、状況に応じて指導スタイルを変える「柔軟性」が求められます。ティーチングは、知識やノウハウを正確に伝達することが目的で、新しい業務やルール指導に適しています。一方、コーチングは社員の自律的な思考と行動を促すことを目的とし、応用力が必要な場面で有効です。「まずはティーチングで型を教え、慣れてきたらコーチングで応用力を磨く」という流れを意識して使い分けてみると良いでしょう。また、緊急度の高い問題や安全性重視の場面ではティーチング、創造性や自主性が求められる場面ではコーチングと、状況に応じた使い分けが重要となります。
一度教えただけで「育成完了」ではありません。行動と結果を定期的に振り返り、軌道修正していくサイクルが必要です。定期的にできたこと、できなかったこと、次に試してみたいことを言語化してもらうなど、振り返りの習慣化も大切です。

現場教育(OJT)の質を底上げしつつ、組織で仕組み化することで、個人の可能性を高めるのに効果的な手法をご紹介します。
OJTは日常業務の中で行われるため、最も重要である一方、指導の質にバラつきが出やすい手法です。この質を高めるには、OJT担当者に対して、本記事で解説したような育成スキル研修を実施し、指導のバラつきを減らすことが効果的です。また、「何を、いつまでに、どこまで教えるか」をまとめたOJTマニュアルやチェックリストを用意し、誰が教えても一定のレベルを保てるように、指導内容の標準化を図ることも大切です。
日々の業務を離れて、外部のセミナーやオンライン学習などで体系的に学ぶ「Off-JT(オフ・ジェー・ティー)」は、現場のOJTだけではカバーしきれない基礎知識や専門スキルを補う場として非常に有効です。
その中でも特におすすめなのが、eラーニングを活用した「マイクロラーニング」の導入です。これは5分程度の短い動画などを業務の合間や移動中といったスキマ時間を活用して学習することで、「忙しくて勉強する時間がない」という部下であっても心理的なハードルが下がり、無理なく学びを継続しやすくなります。
また、こうしたオンラインでの学びは、LMS(学習管理システム)と組み合わせることで真価を発揮します。LMSで「誰が、どの動画を、どこまで見たか」というデータが可視化されていると、現場のOJT担当者の負担軽減となります。
例えば、担当者が「彼はすでにこの業務の基礎知識を動画で予習済みだな」と事前に分かっていれば、現場で一から十まで説明する手間が省けます。その分、より実践的なコツを教えたり、本人が詰まっている部分を重点的にフォローしたりと、現場での指導をより濃密で効率的なものにできるしょう。
社員と上司が「対話」を通じて、業務やキャリア、メンタル面について話し合う1on1ミーティングの定着は、現代の育成に適しています。1on1は「進捗報告会」ではなく、「社員の成長と課題解決のための時間」であることを共通認識として持つことが大切です。上司が話す割合を抑え、社員が話し、自分で考える時間を多く確保するよう、傾聴に徹する意識を持ちましょう。
会社から提供される研修(Off-JT)に加えて、部下が自らの意思で学ぼうとする「自己啓発(セルフ・デベロップメント)」を後押しする仕組みも非常に重要です。
具体的には、本人が興味のある分野の書籍購入費を会社が補助したり、外部のオンライン講座の受講を支援したりすることが挙げられます。また、「このスキルを身につけたら、次はこんなプロジェクトに挑戦できる」といったキャリアの道筋をスキルマップで見える化することも支援のひとつです。
学びが「会社から強制されるもの」ではなく、「自分の理想のキャリアに近づくための手段」へと変わることで、本人の学習意欲はぐっと高まります。自発的な学びを尊重し、応援する姿勢を組織として示すことが、結果として自ら考えて動ける「自律型人材」の育成につながっていきます。
本記事では、人材育成で大切なこと、「明日から変えられる具体的なスキル」、そして「育成を成功させるための仕組みづくり」までを解説しました。
人材育成は、決して魔法のようなテクニックで一瞬にして成果が出るものではありません。しかし、「大切な土台」を整え、「適切なスキル」を具体的な行動として日々実践し、それを「仕組み」で支えることで、着実に社員や後輩の成長を後押しすることができるでしょう。
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