
・対面研修のリモート移行を検討している人事・教育担当者
・オンライン研修での受講者の離脱や集中力低下に悩む方
・最新のリモート研修ツールや具体的な進行のコツを知りたい方
研修のリモート化が選択肢となった今、大切なのは「いかにオンラインで代用するか」ではなく、リモートの特性を活かして「対面以上の成果」をどう引き出すかという視点です。
本記事では、最新のツール活用術から、運用術、階層別のカリキュラム例まで、ポイントを具体的に解説します。
リモート研修を設計する際、まず向き合うべきは「オンライン化することが正解ではない研修もある」という適材適所の判断です。
リモート環境が標準化した現在だからこそ、デジタルの強みが活きる領域と、対面でしか得られない体験を明確に区別することが、教育効果を高めるために重要となります。
専門知識の講義やITツールの操作研修は、リモート環境と非常に相性が良い領域です。 対面研修では講師が受講者の席を回って手元を確認する必要がありますが、リモートなら画面共有機能を活用することで、全員の進捗をリアルタイムで把握し、スムーズな個別フォローが可能になります。また、オンラインで学ぶプロセスそのものがITリテラシーの向上に直結するというメリットも期待できます。
周囲の目がない環境で成果を出すためには、自律的に動くための「セルフマネジメント」能力を養う教育の重要性が高まっています。 自身の進捗を可視化し、能動的にコミュニケーションを取るスキルは、リモートワークにおける個人の成長だけでなく、組織全体の生産性を支える重要な要素です。
そのため、リモート環境特有の「誰が何をしているか見えない」という不安を解消し、リモート下でも円滑に業務遂行できるよう、自ら状況を伝える「発信型の仕事の進め方」を習得し実践できる人材となることが求められます。こうした主体性を引き出す具体的なアクションを型化し、現場の「共通の仕事作法」として根付かせる自律型スキルの教育への対応が求められます。
研修の成果を最大化するには、対面とリモートの長所を組み合わせた「ハイブリッド研修」が効果的です。交流や一体感の醸成は対面で、知識のインプットや定着支援はリモートで行うことで、限られた予算と時間の中で最大の教育効果を引き出すことができます。
開催形式の判断に迷った際は、下記のパターン例を参考にしてください。
フェーズ | 形式 | 内容 | 狙い |
事前学習 (入社1週間前) | リモート | ・会社概要、業界知識のeラーニング ・ビジネスマナー動画視聴 | 基礎知識を事前にインプットし、当日のスタートラインを揃える |
集合研修 (入社後2〜3日間) | 対面 | ・経営層からの理念共有 ・同期との交流ワーク ・名刺交換などの実技演習 | 一体感の醸成と、対面でしか得られない体験価値の提供 |
業務知識習得 | リモート | ・商品知識、業務フローの動画学習 | 必要な業務知識を習得し、配属に向けた基礎を固める |
配属前実践 | 対面 | ・ケーススタディ、ロールプレイング | 学んだ知識を実践形式で定着させ、現場での不安を解消 |
フォローアップ (配属後1~3ヶ月/OJT期間中) | リモート | ・週次の進捗報告会 ・困りごと相談会 ・先輩社員との交流会 | 現場での実践を支援し、孤立を防ぐ |
フェーズ | 形式 | 内容 | 狙い |
理論学習 (研修2週間前) | リモート | ・マネジメント理論の動画学習 ・評価制度の理解 ・事前課題の提出 | 理論を各自のペースで習得し、集合時の議論の質を高める |
実践演習 (1日間) | 対面 | ・1on1面談のロールプレイング ・ケーススタディのグループ討議 ・難易度の高い対話演習 | 表情や空気感を読み取る実践的なスキルを体得 |
実践報告 (研修1ヶ月後) | リモート | ・現場での実践報告 ・成功事例/失敗事例の共有 ・講師からのフィードバック | 学びを確実に定着させ、習慣化を支援 |
[新入社員研修のカリキュラムの組み立て方]もご参照ください。
反転学習とは、オンラインでの「知識のインプット」を事前に行い、対面・集合研修の場を「知識のアウトプット」に充てる学習形式のことです。
従来の「研修で講義を聞き、自宅で復習する」という流れを反転させることで、学習の定着率を劇的に高めることが可能になります。
ハイブリッド研修の代表的な成功モデルが「反転学習」です。リモート環境でeラーニングなどの動画学習を事前に進め、基礎知識をインプットしておくことで、対面で集まる貴重な時間は「ディスカッション」や「ロールプレイング」といった、対人ならではのアウトプットに集中することが可能になります。 「講義を聞くだけ」の時間をなくし、集合研修を「実践の場」へと変えることで、基礎知識で得た学びを元に実務に即した体験を通じて、知識の定着や応用力を得られるようになります。

[ブレンディッドラーニングとは?研修効果を最大化する導入方法]もご参照ください。
研修を「受講日」という点ではなく、前後のフォローを含めた一連のプロセスとして捉えることで、成果はより確実なものになります。
【研修前】リモート予習で「当日の質」を高める
事前動画やアンケートで期待感を醸成し、当日のスタートラインを揃えます。
【研修当日】対面やライブ配信で「気づき」を最大化する
リアルタイムの対話を通じて、個人の思い込みを打破し、新しい視点を得る体験を提供します。
【研修後】リモートフォローで「習慣化」を支える
研修から1週間後、1ヶ月後にオンラインで集まり、実践報告を行うことで、研修を受けただけで終わり、学んだことが現場で活かされないという状態を防ぎ、確実なスキル定着を支援します。
リモート研修の導入の検討にあたっては、リモート特有の利点と、あらかじめ想定しておくべき課題を整理しておくことが円滑な運営に繋がります。
リモート研修の導入は、会場費や交通費、移動に伴う工数といった物理的なコストを大幅に削減します。移動に伴う工数がなくなることで、多忙な現場社員や遠方の拠点スタッフも参加しやすくなり、研修実施のハードルを下げることが可能です。また、移動時間が削減された分を実務や振り返りの時間に充てられるため、業務全体の生産性を維持したまま学習機会を提供できる点も大きな利点です。
対面では講師や会場によって差が生じがちだった研修の質を、全拠点へ同時に、あらかじめ設計した通りの内容で届けられるようになります。また、録画データ(アーカイブ)と配布資料を後日に活用することもできます。当日参加できなかった社員に時間の制限なく提供でき、いつでも何度でも見返せる環境にすることで、「セルフ学習コンテンツ」として役立てることもできます。研修をその場限りで終わらせず、組織の「学びの資産」として蓄積できるのは、デジタル環境ならではの強みです。
そのため、単なる「移動の代替」ではなく、拠点を問わず組織全体の知識レベルを一定に保ち、一度の研修を無駄にせず活用し続ける「学びの仕組み」としてリモート環境を整えることが重要でしょう。
リモート環境では、画面を注視し続ける時間が長くなるため、対面よりも注意が散漫になりやすく、いわゆる「内職」による心理的な離脱が起きやすいという課題があります。また、個人の通信環境やPC操作の習熟度によって、学びの質に差が生じてしまうリスクも否定できません。
さらに、画面越しでは相手の表情の微細な変化や場の熱量が伝わりにくいため、講師側が受講者の「納得感」や「迷い」を察知しにくい側面があります。休憩時間の雑談のような偶発的な会話も生まれにくいため、議論が表面的なやり取りで終わってしまい、受講者が孤独感を感じてしまうケースも少なくありません。
これらを防ぐためには、受講者の主体性に任せきるのではなく、後述する「飽きさせないタイムライン設計」や、万が一のITトラブルに備えたサポート体制を整えておくことが、安定した運用のための必須条件となります。
リモートでは相手の表情の微細な変化や場の熱量が伝わりにくく、心理的な距離を感じやすいという側面があります。 これが原因で「質問がしにくい」「議論が深まらない」といった壁にぶつかるケースも少なくありません。 この課題を解決するには、チャットやスタンプ機能を積極的に活用し、発言のハードルを下げる「エンゲージメントを高める工夫」が欠かせません。講師側からも意図的にリアクションを促し、オンラインならではの風通しの良いコミュニケーションを構築していく姿勢が求められます。
このように、対面の代替としてではなく、デジタルならではの「全員が同時に参加できる仕組み」を研修設計の段階から組み込んでおくことで、画面越しでも一体感のある学びの場を整えることが可能になります。
研修の設計段階から当日の進行まで、少しの工夫を加えるだけで受講者の参加意欲は大きく変わります。具体的な運用のコツを見ていきましょう。
人間の生理的な集中力の限界は約90分周期(ウルトラディアンリズム)とされています。 さらにオンラインでは、画面上の微細な視覚情報を補完しようと脳がフル稼働するため、脳疲労(Zoom疲労)が起きやすいという現実があります。 そのため、研修全体のタイムラインは「90分」を最大単位として設計することが望ましいです。90分の講義やワークを1セットとし、その後5~10分程度の休憩を挟むと良いでしょう。一度PCから目を離して脳をリセットする時間を意図的に設けることで、長時間の研修でも学習効率を維持できるようになります。
講師からの一方的な講義を避け、チャットや投票機能を活用した「双方向のやり取り」を頻繁に取り入れます。 例えば「今の点について、賛成の方は『1』、質問がある方は『2』をチャットに打ってください」といったスピーディーな投げかけを行います。これにより、受講者が「ただ見ているだけ」の傍観者になるのを防ぎ、適度な緊張感と参加意識を維持させることが可能になります。
リモートでのワークを活性化させるには、1グループを「3〜5人」で構成するのが効果的です。これには、タイムマネジメントだけでは解決できない「視認性の限界」と「発言の構造」という2つの裏付けがあります。
まず、Web会議システムにおいて、相手の細かな表情をストレスなく同時に把握できる限界が1画面5人程度である点です。これを超えると一人ひとりの表示が小さくなり、誰が納得し、誰が迷っているかという非言語情報が読み取りにくくなります。その結果、タイムキーパーが時間を区切ったとしても、画面越しの壁を感じて議論が表面的な同意で終わりやすくなります。
また、オンラインは対面と異なり、音声の重なりが許容されません。6人以上のグループで時間を均等に割り振ったとしても、一人あたりの持ち時間は極端に短くなり、自分の意見を深掘りする前に交代となる「消化不良」が起きやすくなります。 3〜5人の少人数であれば、全員の反応をひと目で捉えつつ、十分な発言枠を確保できます。こうした「環境の整え方」こそが、受講者の当事者意識を維持し、議論の密度を高めるポイントとなります。
円滑な運営には、講師のほかにIT操作や機材トラブルを支える「サポート役」を配置する2名体制が現実的です。 受講者が「音声が聞こえない」「画面が見られない」といったトラブルに見舞われた際、講師が対応を中断すると全体の流れが止まってしまいます。サポート役が個別にチャット等で対応できる体制があることで、講師は講義に、受講者は学びに、それぞれ安心して集中できるようになります。
ツール選定は、研修の体験価値そのものを決定づける重要な要素です。
適切なツールを組み合わせることで、発言のハードルを下げたり、後から見返せる議論の記録を自動で残したりと、研修の密度をこれまで以上に高めることが可能になります。
研修のプラットフォームには、それぞれ向き不向きがあります。
Zoom
ブレイクアウトルームの操作が直感的で、自由度の高いグループワークを行う研修に適しています。
Teams
社内コミュニケーションとの連携が強く、研修資料の共有やその後の質疑応答を一つのプラットフォームで完結させたい場合に有効です。
Google Meet
ブラウザ上で動作が軽く、外部講師やパートナー企業を含めた研修でも、機材環境を問わずスムーズに参加しやすい利点があります。
オンラインホワイトボードツールは、付箋や図解をリアルタイムで共同編集できるため、リモート研修の質を劇的に高めます。研修後もそのまま「振り返り資料」として活用できるため、対面以上の利便性を発揮します。
Microsoft Whiteboard(マイクロソフト ホワイトボード)
Microsoft 365環境と統合されており、社内研修でシームレスに図解共有を行いたい場合に最適です。
Zoomホワイトボード
Zoomホワイトボード Zoom会議中にワンクリックで起動でき、ブレイクアウトルームごとに個別のボードを割り当てるなど、グループワークを即座に開始できる利点があります。
Miro
テンプレートが豊富で、複雑なフレームワークを用いたワークショップに強みを持ちます。
研修をやりっぱなしにせず、その後の定着を支援するためにはLMS(学習管理システム)の導入が効果的です。 誰がどの講義を完了し、テストで何点だったかをデータで一元管理することで、「理解が不十分な層」を特定し、受講者個人に合わせてフォローアップを行うことができます。こうしたデータの可視化こそが、リモート教育ならではの強みとなります。
弊社の提供するWorkschoolは、
リモートワーク研修をより戦略的で、成果の見えるものへと進化させます。
リモート研修を支える柔軟なコンテンツ作成
1,500以上の汎用コンテンツに加え、自社独自のノウハウを組み込んだオリジナル教材の作成・修正も容易です。リモート研修を通じて社員の生産性を向上させる、最適なコンテンツ制作を支援します。
学習状況の可視化による適切なフォローアップ
受講者の進捗をリアルタイムで把握できるため、リモート環境でも「誰がどこで躓いているか」を特定できます。データに基づいたタイムリーな声掛けが、学習の形骸化を防ぎます。
自社運用の負担を軽減する直感的な操作性
教材の配信から受講管理までを一元化し、人事担当者の運用工数を削減します。空いた時間を、受講生一人ひとりへのフィードバックなど、より本質的な教育活動に充てることが可能になります。
現場が直面している課題は、役職やキャリアによって異なります。各階層の「今」の悩みに寄り添ったテーマを設定しましょう。
新入社員にとって最大の壁は、周囲の様子が見えない中で「どのタイミングで上司に相談していいか」が分からず、一人で抱え込んでしまうことです。対面なら「ちょっといいですか」の一言で済むことが、オンラインではチャットを打つという心理的なハードルに変わります。そのため、この階層の研修では「調べたり、AIを活用しても解決しなければチャットを送る」「相談時は現在の進捗を画面キャプチャ等で共有する」といった、リモート環境特有の「報連相のマナー(作法)」を具体的に習得させることが重要です。
こうした「オンラインでの振る舞い方」をあらかじめ言語化して共通ルールにしておき、自身のモチベーションを一定に保つセルフケアの方法を学ぶことで、孤立感を防ぎ、早期の戦力化を支援できるようになります。
チャットツールを介した「非同期コミュニケーション(返信を待たずに情報を送る)」の質を高めるトレーニングは、全社員に必要なスキルです。伝え方が曖昧だと不必要な確認作業が増え、組織全体の停滞を招くためです。 結論から述べる「PREP法」の徹底や、相手が判断しやすい「依頼の型」を身につけることで、不必要なやり取りを減らし、組織全体の業務スピードを底上げできます。
見えない社員を適切にマネジメントするためには、「何を生み出したか」という成果(アウトプット)で評価する基準作りが不可欠です。 また、顔を合わせる機会が減るからこそ、意識的に「雑談」や「相談しやすい雰囲気」を作ることを意識し、離れていても信頼関係を維持できるマネジメント能力が求められます。
研修のリモート化が選択肢となった今、大切なのは「いかにオンラインで代用するか」ではなく、リモートの特性を活かして「対面以上の成果」をどう引き出すかという視点です。本記事でご紹介したリモートワーク研修の運用術やカリキュラムを参考に、自社の組織文化や現在の課題にフィットするリモート研修の形をぜひ探求してみてください。